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最高裁判所第二小法廷 昭和28年(あ)5223号 決定

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人岡田直寛の上告趣意について。

原判決は、所論第一審判決主文掲記の没収物件以外の価額二一万二千六百三〇円に相当する賄賂はすでに被告人において費消した旨判示して居り、右事実は記録上明白であるから、その後右賄賂の内金一〇万円を贈賄者に返還したとしても、その返還は賄賂そのものの返還ではないから、被告人においてすでに享受した利益を追徴される責任を免れることを許されないことは、当裁判所の判例(昭和二四年(れ)第一九九七号同年一二月一五日第一小法廷判決、集三巻一二号二〇二三頁)に照し明らかである。されば右同趣旨に出た原判決は正当であり、所論違憲の主張は前提を欠くものといわなければならない。論旨は採用の限りでない。

また記録を調べても同四一一条を適用すべきものとは認められない。

よって、同四一四条、三八六条一項三号により裁判官全員一致の意見で主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 谷村唯一郎 裁判官 池田克)

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